2024年10月29日
- 認知行動療法
盗撮再犯防止のためのカウンセリング(認知行動療法)
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター大阪店の岡村です。本日は「盗撮の再犯防止を目的としたカウンセリング」についてお話しします。当カウンセリングセンターにお越しになる方の中には、盗撮に関わる問題でお悩みの方もいらっしゃいます。このような問題に対処するためには、再犯防止に向けた専門的なサポートが重要です。今回は、盗撮の再犯防止に有効なアプローチであるリラプス・プリベンションモデル(Relapse Prevention Model)も取り入れ、どのようにカウンセリングを進めていくかを解説します。
1. 盗撮行為の心理的要因と再犯リスク
まず、盗撮を行ってしまう背景には、多くの心理的要因が関係していることが分かっています。特に以下の要因が挙げられます。
- 盗撮に影響する認知パターン:盗撮加害者は、盗撮行動に影響する認知を持っていることがあります。例えば、「被害者が同意していた」「自分には特別な権利がある」といった認知です。これらの盗撮行動に影響する認知パターンが、再発のリスクを高める要因となります。
- 衝動の抑制ができない:盗撮行為に対する衝動が強く、自分自身の意思でコントロールできないケースも多く見られます。
カウンセリングでは、これらの要因に向き合い、根本的な問題に対処することで、再犯リスクを軽減することを目指します。特に、再犯防止に向けて効果的なアプローチの一つが「リラプス・プリベンションモデル」です。
2. リラプス・プリベンションモデルとは
リラプス・プリベンション(Relapse Prevention)は、依存症の再発防止に用いられているモデルで、行動の再発(リラプス)を防ぐことを目的としています。このモデルでは、再発を防ぐために「ハイリスク状況」を特定し、適切な対処法を学ぶことで再発を回避します。
盗撮行為の再発においても、このリラプス・プリベンションモデルが効果を発揮します。具体的には、再犯リスクを高める「引き金」となる状況を特定し、それに対する適切な行動・思考の切り替え方法を学んでいきます。このモデルは、衝動をコントロールするだけでなく、本人が感じている葛藤や不安を根本から解消するためのアプローチにも役立ちます。
3. 盗撮再犯防止におけるリラプス・プリベンションモデルの活用法
リラプス・プリベンションモデルを活用した盗撮再犯防止カウンセリングでは、以下のようなステップを踏んでいきます。
1. ハイリスク状況の特定
カウンセリングの初期段階で、盗撮の衝動が発生しやすい状況(ハイリスク状況)を特定します。例えば、「ストレスが高まった時」「お酒を飲んだ後」「特定の場所や時間帯」など、具体的なトリガーを把握します。このプロセスを通して、どのような状況で再犯リスクが高まるのかを理解し、予測可能なリスクに備えることが可能となります。
2. コーピングスキルの習得
次に、ハイリスク状況に直面した時に有効な「コーピングスキル(対処スキル)」を学びます。コーピングスキルには、以下のような方法があります。
- リラクゼーション技法:呼吸法や筋弛緩法など、緊張を和らげる方法を習得します。これにより、衝動に駆られたときの感情をコントロールしやすくします。
- 代替行動の設定:ハイリスク状況に直面した際に、盗撮ではなく代わりの行動を取る方法を考えます。たとえば、ハイリスク状況に直面した際は運動をしたり、友人や家族に連絡をするなどの行動が挙げられます。
- 自動思考の確認と修正:盗撮の衝動が出る際には、自分の中でどのような考えが浮かぶかを確認します。たとえば、「今だけなら大丈夫」という思考を持った場合、その思考が現実的ではないことを再確認し、自制心を働かせます。
3. 自己評価とフィードバック
リラプス・プリベンションモデルでは、カウンセリングを通じて得られたスキルや知識を自分自身で評価することも重要です。毎回のセッションの終わりには、自分がどの程度ハイリスク状況をコントロールできているかを振り返ります。また、カウンセラーからのフィードバックも得ることで、自己改善のプロセスが加速します。
4. 日常生活での維持戦略の確立
カウンセリングの終盤では、学んだスキルや知識を日常生活の中で維持する方法を確立します。たとえば、「週に一度の自己チェック」や「特定の状況での行動計画」などを設定し、自らの行動を管理する能力を高めます。これにより、カウンセリングが終了した後でも自分自身で再発防止に取り組めるようになります。
4. 盗撮再犯防止のための認知行動療法のアプローチ
リラプス・プリベンションモデルに加えて、認知行動療法(CBT)も盗撮の再犯防止に効果的です。認知行動療法は、問題行動に関連する思考や感情を分析し、それをコントロールする方法を学ぶことで、行動を変えていくアプローチです。
盗撮の場合、抑えられない衝動や、自己コントロールの難しさを抱えていることが多く、これを「自動思考」として捉え、認知の修正を行います。また、盗撮に至るプロセスを段階的に分解し、どの段階で適切な行動に切り替えられるかを学びます。このプロセスを通して、衝動を少しずつ制御することができ、再犯のリスクを軽減します。
5. 再犯防止に向けたカウンセリングの重要性
盗撮行為を一度行ってしまうと、社会的な信頼を失うだけでなく、自己嫌悪や罪悪感に苛まれ、精神的な負担が増します。特に再犯防止のためには、自分を客観的に見つめ、自己理解を深める必要があります。
リラプス・プリベンションモデルや認知行動療法を通じて、自分自身の行動のパターンや引き金に気づき、対処法を身につけることで、自己コントロールを取り戻しやすくなります。そして、再犯防止に向けた対策を自分で実践できるようになることが、長期的な改善には重要です。
6. 認知行動療法カウンセリングセンター大阪店でのサポート
認知行動療法カウンセリングセンター大阪店では、盗撮の再犯防止に向けた専門的なサポートを提供しています。個々の状況に合わせて、リラプス・プリベンションモデルや認知行動療法を組み合わせ、再犯防止に向けた具体的なプランを立てていきます。盗撮の再発防止に取り組みたい方、またはご家族の方は、ぜひご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター大阪店
https://osaka.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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