MENU

こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンター大阪店の岡村です。今回は、嘔吐恐怖(えずき恐怖とも呼ばれます)についてお話ししたいと思います。嘔吐恐怖を抱えている方は、日常生活でさまざまな困難を感じることが多いです。このブログでは、嘔吐恐怖がどのようなものか、そしてその改善方法について、特に認知行動療法(CBT)の観点から解説します。

嘔吐恐怖とは?

嘔吐恐怖とは、嘔吐に対して強い恐怖感や不安を感じる状態を指します。この恐怖には、大きく分けて2つのタイプがあります。

1. 自分が嘔吐することへの恐怖

このタイプの嘔吐恐怖は、自分自身が吐きそうになる感覚に対して極度の恐怖を感じます。例えば、食べ過ぎや車酔いなどで胃がムカムカする状況を避けがちになります。その結果、外出が怖くなり、食べる量を制限してしまうこともあります。生活に支障が出ることが多く、日常の活動が制限されてしまうのが特徴です。

2. 他人が嘔吐することへの恐怖

もう一つのタイプは、他人が嘔吐する場面を見ることに対する恐怖です。例えば、テレビや映画の中で誰かが吐いているシーンを見ることができなくなったり、居酒屋のように誰かが吐く可能性がある場所に近づけなくなることがあります。こちらも生活に大きな制約が生じる場合があります。

嘔吐恐怖を抱えている方は、自分が吐くことも他人が吐くことも避けたがります。場合によっては、「嘔吐」という言葉を聞くだけでも不安を感じる方もいます。そのため、なるべくそのような場面や言葉に触れないように生活を工夫することが一般的ですが、恐怖を避ければ避けるほど、その恐怖は強くなっていくのが嘔吐恐怖の特徴です。

嘔吐恐怖の症状

嘔吐恐怖の症状は非常に強いものです。恐怖の場面に直面すると、心臓がドキドキしたり、実際に吐き気を催すこともあります。また、体が震えたり、場合によってはパニック発作を引き起こすこともあります。このような身体反応が出るため、恐怖を感じる状況を避ける傾向が強まり、日常生活に多大な影響を及ぼすことになります。

認知行動療法(CBT)による改善方法

嘔吐恐怖に対して効果的な改善法の一つが認知行動療法です。この方法では、恐怖の対象に少しずつ慣れていくことで、恐怖感を軽減させていきます。具体的には、以下のような手順で行います。

1. 恐怖の言葉に対するアプローチ

まず、嘔吐という言葉だけで不安を感じる場合の例を紹介します。この場合、非常に遠くの壁に「嘔吐」と書かれた文字を貼り、それを遠くから眺めてもらいます。徐々に距離を縮めていくことで、心臓のドキドキ感や不安を感じつつも、その言葉がそれほど危険ではないと体が認識するようになります。最終的には、嘔吐という言葉を見たり読んだりしても、恐怖感が薄れていきます。

2. 自分の嘔吐感に対するアプローチ

次に、自分が嘔吐することに対する恐怖のケースです。この場合、曝露療法や認知再構成法を用いることが多いです。例えば、少し多めに食事を取って胃が満たされる感覚をわざと作り、その状態でしばらく過ごしてみます。すると、「このくらいなら大丈夫だ」と体が学習し、徐々に食事や満腹感に対する抵抗がなくなっていきます。

さらに、強い嘔吐感に対しても曝露を行うことができます。極端な例として、箸のようなものを喉に軽く触れさせる練習をすることで、嘔吐感に慣れることも可能です。ただし、これは非常に高度な方法で、嘔吐恐怖をしっかりと改善したい場合にのみ行うべきアプローチです。

3. 他人の嘔吐に対するアプローチ

他人の嘔吐に対する恐怖の場合も、徐々に慣れていくことが有効です。例えば、最初は嘔吐シーンの動画を音を消して遠くから見ることから始め、徐々にその距離を縮めていきます。最終的には、動画や映像を見ることに対する抵抗がなくなるまで続けます。また、他人が苦しんでいる場面で、自分が何もできないという不安を抱える場合は、対処法を学び、それを実践する練習を重ねることで、自信を持てるようになります。

日常生活での対応

嘔吐恐怖を改善するためには、恐怖を避けるのではなく、少しずつ恐怖に向き合っていくことが重要です。例えば、居酒屋や嘔吐の可能性がある場所に少しずつ近づいてみるなど、恐怖の対象に対する距離を縮めていくことで、嘔吐に対する過剰な恐怖感を軽減させていきます。

専門家のサポートが重要

嘔吐恐怖は非常に強力な恐怖感を伴うため、専門家と一緒に進めることが推奨されます。認知行動療法カウンセリングセンターでは、一人一人に合った方法で嘔吐恐怖に対するカウンセリングを行っています。無理をせず、自分に合ったペースで恐怖に向き合いながら、少しずつ改善を目指しましょう。

おわりに

嘔吐恐怖は日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、認知行動療法を通じて恐怖を克服することが可能です。もし、嘔吐恐怖に悩んでいる方がいれば、専門家のサポートを受けながら、一歩ずつ改善していくことをお勧めします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

認知行動療法カウンセリングセンター大阪店

https://osaka.cbt-mental.co.jp/

——筆者情報——

岡村優希

株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役

認知行動療法カウンセリングセンター代表

公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士

個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。

さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。

◆執筆書籍

「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版

「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房

◆テレビ出演

読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日

「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演

◆雑誌掲載

「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号

◆近年の講演実績

2024年2月21日

広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師

2023年2月9日

NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師

2022年7月6日

筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師

その他、学会発表多数

一覧に戻る