こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンター大阪店です。

「人前に立つと頭が真っ白になる」
「緊張で声が震え、うまく話せなくなる」
「失敗しないように準備しているほど、逆に上がってしまう」

いわゆる「あがり症」や「人前での緊張」は、決して珍しいものではありません。

今回は、認知行動療法の視点から緊張をなくそうとしない、現実的な向き合い方についてお伝えします。

緊張は「なくすもの」ではなく、「扱い方」の問題

世の中には
「緊張しない方法」
「上がり性を克服する方法」
といった情報が数多くあります。

ただ、そもそも緊張は悪いものではありません。

人は、大事な場面に直面すると緊張します。
それは「どうでもいいこと」ではなく、

「ちゃんとやりたい」

「意味のあることだ」

と感じているからです。

緊張は、その場面が自分にとって大切であることを知らせる、自然な反応でもあります。

問題になるのは、緊張そのものではなく、緊張を
「危険なもの」
「失敗のサイン」
として扱ってしまうことです。

緊張が強くなると、頭の中は「思考のマルチタスク」になる

人前で話す場面を想像してみてください。

・ちゃんと話せているか
・早口になっていないか
・変なことを言っていないか
・相手はどう思っているか
・100人中100人を満足させられているか

こうした考えが同時に浮かぶと、脳は一気に思考のマルチタスク状態になります。

実は、人の脳はマルチタスクが得意ではありません。
気をつけることが増えるほど、使えるエネルギーは分散し、

・言葉が出にくくなる
・台本が飛ぶ
・頭が真っ白になる

といった状態が起きやすくなります。

これは
「気合が足りない」
「慣れていない」
からではなく、脳の仕様です。

緊張を下げようとするほど、ハードルは上がっていく

よくあるのが、

・緊張しないようにしよう
・完璧に話そう
・失敗しないように準備しよう

と考えすぎてしまうことです。

すると、
「全部うまくやらなければならない」
「相手の反応をコントロールしなければならない」
という発想になり、かえってハードルが上がっていきます。

他人の評価や反応は、自分では完全にコントロールできません。
それを何とかしようとするほど、緊張は強くなっていきます。

大事なのは「緊張しないこと」ではない

実は、パフォーマンスを発揮するためにはある程度の緊張は必要です。

まったく緊張がない状態が、必ずしも良いわけではありません。

大切なのは、緊張があるかどうかではなく緊張があっても「なんとかなる」と感じられるかどうかです。

チェック項目は1つか2つでいい

緊張しやすい場面では、準備を増やしすぎないことがポイントです。

「完璧に話す」
「全部覚える」
といった目標は、思考のマルチタスクを加速させます。

代わりに、チェック項目を1つ、多くても2つに絞ります。

たとえば、

・最後まで話し切る
・ゆっくり話す

それだけで十分です。

「程よい緊張 × 程よくできた」を積み重ねる

緊張をゼロにする必要はありません。

むしろ、程よい緊張の中で、程よくできたという経験を重ねることが、いちばん現実的で確実です。

そうした体験が増えると、

・緊張しても致命的なことは起きない
・完璧じゃなくても話はできる

という感覚が、少しずつ身体レベルで分かってきます。

緊張を敵にするのではなく、緊張があるままでも動ける状態を作ること。

それが、あがり症や人前での緊張と付き合っていくための、現実的な考え方だと考えています。

あがり症に関するよくある質問（Q&A）

Q1. あがり症は性格の問題でしょうか？

いいえ、性格だけで決まるものではありません。
あがり症は、「緊張への捉え方」や「注意の向け方」の影響を強く受けます。
認知行動療法では、性格を変えるのではなく、緊張との付き合い方を整理していきます。

Q2. 緊張を感じるとき、無理に落ち着こうとしない方がいいですか？

はい。無理に落ち着こうとすると、かえって緊張に意識が集中しやすくなります。
「緊張していても続けられる行動」を決めておく方が、結果的に安定しやすくなります。

Q3. カウンセリングでは何をするのですか？

具体的な緊張場面を整理し、
・どこで緊張が強まるのか
・頭の中で何が起きているのか
・負荷を下げる現実的な工夫は何か

を一緒に確認していきます。
必要に応じて、段階的な練習も行います。

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